第一章
6.パイプとベランピング
 

さて、パイプと執筆生活を紹介した訳だが、次に必要になるのが執筆スペースである。
間違っても「喫煙スペース」などでは無い。
冗談はさておき、スペース確保について今回はベランピングを取り上げて行きたいと思う。


ベランピング、昔は無かった言葉である。
語原はベランダとグランピングを合わせた造語との事。
アウトドアの代名詞であるキャンピング、これを豪華に贅沢に楽しむ為に生まれた単語がグランピングだ。
ベランピングとは、身近な生活スペースであるベランダで、豪華なキャンプスタイルを楽しむ事を表す為に作られた言葉である。
身近な所で手軽に体験できるグランピング、などとマスコミに紹介されている。
何時ぐらいから使われている言葉なのかは、ネットで調べても定かではないが、それほど古い話でもないと記憶している。
2010年前後にはまだ無かったような気もする。


しかし町のど真ん中で、それも自宅の軒先。
ベランピングなどと横文字で紹介するから様になってはいるが、その実はただのナンチャッテ・アウトドアにしか過ぎない。
しかし日本人には、こんな楽しみ方が案外似合っているのかもしれない。
何というか、まだ子供だった時に作った秘密基地のようでもあり、箱庭的と表現してもよいと思うが、どうも日本人は小さな所に、大きな世界を詰め込むのが好きなようだ。
小は日本特有の文化「盆栽」であり、大は京都にある日本最古の回遊式庭園と言われる「桂離宮」。
日常生活の近いところにありながら、山や川を感じる事の出来る空間、そこで仮想体験を楽しむ。
中々少年心をくすぐる文化と言える。
日本建築を例にとれば襖絵(ふすまえ)や屏風も、これと同じ意味を持つと思うが、日本の文化に深く根付いている芸術である、
これらの文化とベランピングには、何処か日本人の心に響く共通な世界があると感じる。

実はそう言う私も狭い所好き(何処かの住宅CMみたいだが)、ベランピングまがいの事を2001年から普通に行っていた、ちなみに2001年はパイプ物語の掲載開始年である。
ここでも実体を暴露する事になるが、パイプ物語の多くはベランダに設けられた書斎(ナンチャッテ)で執筆された。
ただし、決して夫婦仲が悪いとか、家族から孤立しているとか、そんな込み入った事情がある訳ではない。
では何故、早くからベランピングまがいの事をしていたのか、理由は推して知るべし。
執筆の真の目的が、「充実した喫煙タイムを楽しむ」と言うところにあるからだ。
パイプ喫煙であるが、火付けの時に発生する煙は想像以上に多いと言うか、それなりに煙い。
また、パイプ喫煙の合間にたまに吸う葉巻、これがまた香りが独特で強烈である。
換気の良好な、吹っき晒しのような部屋なら(廃屋か??)パイプだろうと葉巻だろうと一向に気にならないが、密閉生の高いマンションなどだとそうも行かない。
また、換気の良い部屋を喫煙専用に一室用意できる程のお金持ちならそれでも良いが、そうでもない一般ピープルにとっては、住環境や換気の事を考慮すると、自然ベランダのような場所にスペースを設ける事がベーターな選択肢となる。
しかもこの程度の喫煙スペースなら、それほどお金を掛けなくとも簡単に実現できる。
ホームセンターで二段式の物干しを一台と、それを覆うビニールシートを一枚。
100円ショップでは、人工芝と床用の素材を数枚。
さらに夜間用として、LED照明とそれを乗せる為の網。
少々日曜大工まがいの工作は必要だが、総額1万円も掛からずに座椅子と机を持ち込めるスペースはできあがる。
しかし怪我の功名と言うと例えが悪いが、この喫煙スペースことのほか執筆生活の役に立った。
自称書斎などと言ってはいるが、所詮はベランピングもどきであり、雨風を凌げる程度の作りだ。
また、ベランピングなどと言ってはみたものの、確保できるのは極狭いスペースでしかなく、かろうじて小さな机と座椅子が置ける程度である。
ただしこれを逆説的に見れば、喫煙と執筆・読書しかできないスペースになる。
それなりに書き物を趣味として来た者として思う事は、執筆するスペースには出来るだけ余分な物を置かない方がベターと言う事だ。
音楽鑑賞にしろ読書にしろ、文化的な生活であり、日常生活から離れる為の儀式が大切である。
これは執筆においても同じであり、ペンを手にした途端物語が湧いて出る、なんて事など有りはしない。
物を書く為には、頭が執筆モードに切り替わる助走時間が必要であり、居間などの自由度が高く雑多な物が存在する空間では、気が散ってしまい執筆モードに入るのが困難になる。
それに比べ、狭いベランダの空間に身を置いてのパイプ喫煙、執筆モードに入るのにこれ以上のものは無い。

パイプとタバコを選び、時間を考えながらチャンバーに詰めて行く。
喫煙の為の準備を終えたら次は、火付けに始まり煙を安定させるまでの一連の動作が待っている。
これがまた、執筆に臨む為の良いルーティンとなる。
最初の火付けはマッチが良い。
タバコの表面に満遍なく火が回るよう、吸い込みを繰り返す。
黒く炭化し盛り上がったタバコをタンパーでならしてから、ライターで再着火。
さらにタンパーでタバコを押さえながら、煙の濃さとタバコの盛り上がりを目安にし、煙を安定させて行く。
タバコを味わう様にくゆらしながら、本を手にとったり、書き掛けの原稿に再度目を通したりと、執筆を始める為の程良い準備運動になる。
そこから先は小一時間、お気に入りの紫煙の中での文化的な時が流れて行く。
パイプスモーカーならではの優雅な時間であり、その空間にいると言うこと事態が、中々代え難い贅沢である。
夏は暖房、冬は冷房完備で、清少納言の枕草子・第一段を地で行く様な生活が送れる事は保証付きだ。
「夏はあけぼの、冬は昼(が執筆するのに向いている)」
風流の極み・・・・・・。
冗談はさておき、ここまでで執筆を行う為の時間と専用のスペースについて書いてきたが、次に執筆に適したと言うか、特化したと言っても過言ではない「執筆機材」について触れて行こう。

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