第三章

7.ジュース発生の一考察


『コーンパイプ探検記』を企画して、現在コーンパイプで色々と実験をしている今日この頃、パイプスモーカーの皆様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。


パイプ喫煙を体験する。
その入門用として、「入りやすい」「経済的に無理せず出来る」「喫煙技術に焦点をあて易い」これらの条件を考慮し、コーンパイプが使えないかと実験を行っているところである。
ところがヒョンな所から、パイプ喫煙における邪魔な存在「ジュース」、これの発生原因と対処法についての仮説を思いついた。
折しも、加熱式煙草で喫煙と水蒸気の関係に言及したところだし、この際「パイプ喫煙とジュース」についても紹介しておこう。


あれは執筆の材料集め目的で、二十年ぶりぐらいに買ったコーンパイプ筆卸の日だった。
購入したコーンパイプはレジェンド、あのマウスピースが黄色で透明なやつだ。
ただし二十年前に買ったコーンパイプと決定的な違いがあった。
それがフィルターの存在、「いやいや、実際コーンパイプごときにフィルターは如何なものか。」と思ったのが正直な感想だ。
しかし、パイプのフィルターに関して需要がある事は偽らざる事実だ。
なお、各種フィルターに関しては、コーンパイプ探検記でも取り扱うつもりでいるので、「8.パイプ喫煙とフィルター」で改めて言及するとして話を進めよう。

コーンパイプにまで進出して来ているフィルター、タバコ専門店や煙草カタログをみる限りはパイプ喫煙での市民権を得ている。
また、フィルターに限らず、システムパイプと言われる物も幾つも存在する。
この喫煙時に発生するジュース、パイプ(ビリヤード系のストレートなパイプ)をくわえたまま上を向いた時に垂れて来たり、ベント系のマウスピースの時は少し強く吸った時に、飛沫になって飛び込んで来たりして、苦くて辛い思いをした事は数え切れない。
またこのジュース、チャンバーに逆流すると底にある煙草葉を湿らせ(ベチャベチャになる)、喫煙の終盤にジュージューと音を立てたり、火の回りを邪魔したりもする。
ともかく、パイプ喫煙においてジュースの発生は邪魔でしかないが、各種フィルターや様々なシステムパイプは、ジュース対策として作られていると言っても過言ではない。
以上、フィルターとシステムパイプに軽く振れた訳だが、そこから痛感する事は、「パイプ喫煙とジュースの発生は宿命的問題である。」との結論だ。

話がフィルター関係に脱線したので、コーンパイプの筆卸に戻すが、極めて水分の吸収が高いコーンパイプに、ジュース対策として施されたフィルターまでもが装着されているコーンパイプ・レジェンド、「ジュース対策は120%」そんな意気込みで試し吸いを始めた。
その途端、予想に反した事態が発生した。
それが、「マウスピース内にびっしりと張り付いた水滴」の存在だ。
たまたま運良く、マウスピースが透明だった為に気づいたのだが、あの結露は半端なものでは無かった。
改めてジュース問題を実感させられた体験であるが、どうしても腑に落ちない事がある。
今回の喫煙実験は、コーンパイプにジュース対策のフィルターを付けてのものだった、しかも筆卸である。
ジュース対策は確かに120%の布陣に誤りは無い、にも関わらず海ぶどうにも匹敵する程のマウスピース内での結露だ。
勿論、喫煙も慎重に行っている上に、煙もややスカスカな感じがあり、過加湿なんて事はあり得ない。
これだけの条件が揃っているのだ、結露の主な発生場所は一つしかない。
それが「事件は現場で起きている。」・・・・・・。
間違えました、これだとレインボーブリッジが封鎖できませんね。

冗談はほどほどにして、結露の発生場所に話を戻そう。
結論は「ジュースの発生はマウスピース内で起きている」の一択である。
ヴァージンのコーンパイプにフィルターの装着と言う、湿気対策が万全の状況での喫煙試験である、マウスピース以外での結露の発生は100%ありえない。
もっとも、「6.加熱式煙草と水蒸気」のところでも取り上げたが、「質の良いパイプをしっかり乾燥させた状態」と言う条件(もしくは乾燥したコーンパイプ)は付くが、ジュースの発生はその大半がマウスピース内で起きていると言っても間違いではない。
また、結露が発生したマウスピースが、口に近い場所である事と、煙の状況から判断し、「結露の原因は、煙に含まれる水分よりも、吹き戻しの呼気に含まれる湿気によるもののウェイトの方が高い。」と言う結論に至る。
なお、ジュースの発生を検証する為、6mm・9mm二種類のチャコールフィルターでも実験してみたが、結果は次の通りだった。

写真ではわかり難いが、9mmフィルターのシミ(水分他による)だが、マウスピース側は「BIGBEN」のNの所まで浸食している。
それに比べ、ボール側は煙道下部から上に向かい、斜めに浸食してはいるが、ロゴの手前で止まっている。
またシミの色から見て、マウスピース側は透明な水分がほとんどで、ボウル側は茶色のジュースが主体と思われる。
この実験の結果からジュース(余分な水分)の発生は、間違いなくマウスピースで結露した水分の逆流から始まっていると言える。
では、以上の実験結果からジュースの発生原因を総括してみよう。


「パイプ喫煙の宿敵とも言えるジュースであるが、パイプ喫煙を美味しく楽しめる様、しっかりと煙の湿度管理が行えている場合、ジュースの発生箇所はマウスピース内であり、発生の要因は、煙よりも吹き戻しの呼気によるウェイトが重い。」

ちなみにこの総括を証明するような記事をネットで見つけた。
そこに紹介されていたのが、「ジュースがさほど気にならず煙草を最後まで灰にできるパイプ」だった。
肝心のパイプの形状だが、「浅いお椀型のチャンバー(注1)に、長いブライヤーのシャンク(煙道部)、極端に短いマウスピース」だった。
まさにこのパイプ、「ジュース発生の一考察」で検証された要因から見て、ジュースの発生を極力少なくできる構造だと言えよう。

この記事を見て早速似通ったパイプで試喫を行ってみた。
使用したパイプはカナディアンにロバット、どちらもシャンクが長く、マウスピースが短い。
結果は、どちらもジュースの発生を押さえて喫煙を終える事が出来た。
これらの実験から導き出されるジュース対策、これを紹介して終わりにしましょう。

長らくおまたせ致しました、それではジュースの対処法を発表致します。
パイプ喫煙におけるジュース対策の第一位は、「短いマウスピース」。
マウスピースは短い程ジュースの発生量を押さえる事ができる。
また、マウスピースの形状は、煙の流れを阻害しないもの(ベントよりもストレート)の方が、ジュースの発生を軽減できる。
次に第二位、シャンク(煙道部)は長い方が、ジュースの吸収を助けてくれる。
しっかりと乾燥させたパイプや、コーンパイプの様に水分を吸収し易い素材もこれに該当する。
では、以上に該当しないパイプはどうしたらよいのか。
これについては私の対処法を紹介するが、残念ながら「ティッシュで作ったコヨリを、マウスピース側から差し込んで、ジュースを除去している。」のが現状である。
おあとの支度がよろしいようで・・・・・・。

(注1) テーパーが強く、底が狭いチャンバーよりも、浅いお椀型のチャンバーの方が煙草を最後まで灰にし易い。

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