15.グルメを極める(味覚編)

さて「グルメを極める(発生編)」では、グルメの大きな柱の一つとして、「加熱による、味わいの気化」を定義した。

 

それと共に、味覚よりも嗅覚の方が、多彩であるとの提言も行った。

 

これは、味覚と嗅覚との違いによって起きるものである。

 

一説によれば、味覚が五味を判別する事ができるのに対し、嗅覚の方がはるかに性能が高く、実に数百種類の臭いを嗅ぎ分ける事が可能と言われている。

 

この辺りの話は、味覚編と嗅覚編の二回に分けて整理して行くが、まずは「グルメを極める(味覚編)」について、ひとくさり。

 

まずは「グルメを極める(五感編)」の入り口で、展開の柱となるグルメに対してのアンチテーゼから。

 

「食事とグルメは別物である」

 

グルメとパイプ喫煙について話題を展開しているが、最初にハッキリさせておかなければならない概念がある。

 

それが、食事とグルメの違い。

 

食事とは生きて行く為に必要な楽しみ、こんな意味合いが強い。

 

しかしグルメともなると、生活とは無関係な楽しみにも足を踏み入れる事になる。

 

ルイ・ロペス(場末の予言屋)は、パイプ喫煙を「バーチャル・グルメ」と位置づけているが、これなどは「生を営む事に寄与しない」最たるものである。

 

食事を空腹を満たす事や、栄養を補給する事から言及すれば、健康的に生活を営む為の行為となる。

 

それに対し、食事をグルメの観点からみた場合、より文化的色合いが濃くなる。

 

文化と言えば遊びの事となり、生活の営みよりも趣味のこだわりの比重は上がる。

 

まあ、文化そのものが過剰な存在である事は確かで、グルメを極めると健康には良ろしくない。

 

それと同様に、健康的な喫煙生活なんて話題も有りはしない。

 

逆に言えば、禁煙した為に栄養失調になる様な事は、ハナから起きはしないが・・・・・・

 

それはさて置き、ここで二つ目のアンチテーゼだ。

 

「グルメは舌で味わうもの、と言う認識は間違っている」

 

グルメとは文化であり、五感すべてと知識や経験を総動員して、味わうものとなる。

 

では、さっそく五感の第一発め「味覚」の、科学的検証から入ろう。

 

まずは味覚の定義だが、「味覚とは舌で味わうもの」と言う事だ。

 

ちなみに味覚は、舌先が甘味。

 

中央部で塩味と旨味、側面部で酸味、最後に舌の奥で苦味と、こんな具合に説明されている。

 

甘味・塩味・酸味・苦味・旨味、これが味の基本「五味」となる。

 

しかし、ここにはグルメ番組のコメンテーターが良く口にする、「とろける様な」も、「サクッとした口当たり」も無ければ、フルーティーやフローラル、メローにアーシー、オイリーなどの表現も出ては来ない。

 

原因は、グルメとは味覚の他に、嗅覚や触覚などの五感を全てを網羅していて、味覚はそのごく一部でしかないからだ。

 

この辺りは追々言及して行くこととして、最後によりこだわった味覚の体験で締める事としよう。

 

【 ベネンシアドール 】

 

随分昔の話になるが、とあるお酒好きなパイプ仲間に、シェリー酒(注1)の専門店に連れて行ってもらった事がある。

 

そこのカウンターにいたのが「ベネンシアドール」。

 

「ベネンシアドール」とは、シェリーやワインを、ベネンシアと呼ばれる細長い柄杓で樽から汲み上げ、試飲用のグラス(カタビノ)に注ぐ職人の事である。

 

テレビで見た事がある人もいると思うが、シェリー酒は空気に触れさせ香りを立たせる為に、ベネンシアドールの頭上よりさらに高い位置から注がれる。

 

この糸の様に注がれるお酒を、カタビノと呼ばれる口の細いグラスに、こぼす事なく納める、中々見応えのあるパフォーマンスだ。

 

酒場の説明はこのくらいにし、こんな専門のお店で、パイプ仲間から進められるまま、とある二種類のグラスでお酒を飲んだ。

 

最初に試したのが試飲用のカタビノ。

 

ブランデーグラスを細長くした様な形で、小ぶりで口がすぼまっているため、お酒は口先から細く入って来る。

 

最初に舌先に当たったシェリー酒は、次に舌の中央、さらに舌の奥を通り喉を通過する。

 

味わいとしては、甘味から始まり、酸味・苦味と続き、最後に喉の奥に刺激を残しながら、香りが鼻へと抜けて行く。

 

さすがに試飲用のグラスである。

 

味わいと香りが順番に開いて行き、味の詳細を分析しやすい。

 

次に、別のグラスでも酒を勧められたが、グラスは逆三角形のカクテルグラス。

 

この時は飲み口が大きく開いている為、唇を平らにしてカパッと飲む事になる。

 

肝心の味わいだが、お酒を口に含んだ途端、香りや味わいが一気に開く。

 

これはこれで、小難しく無く酒が楽しめる。

 

以上の様に、同じ酒であってもグラスを変えるだけで、全く別の楽しみ方ができる。

 

逆に言えば、お酒やグラスの特性を熟知し、「気分に合わせてより楽しめる飲み方」をできるのが、お酒の文化を嗜むと言う事だと思う。

 

もっともこれらは、様々な知識や感性が必要となり、中々手強くはあるが、その分面白い趣味でもある。

 

さて、舌での味わい方を少しかじったところで、次は嗅覚に話題を移して行こう。

 

 

(注1)シェリー酒:スペイン・アンダルシアで生産される、酒精強化された白ワイン


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