第三章

2.タバコを楽しむ(知識編)


タバコを楽しむ知識編ですが、本格的に紹介するとなるとその情報量は膨大になる。
パイプタバコのティスティングをしよう等と、考えているのであればそこまで求めても良いが、楽しくパイプ喫煙をしようと言うのでれば、パイプタバコの概略だけでも十分である、従ってここではアウトラインをなぞるだけにしよう。


まずはパイプタバコの情報と言えば、昔から定番となっているのが「タバコのタイプ」である。
これは大きく分けて二種類ある。
一つ目が日本でお馴染みの、「イギリスタイプ」「アメリカタイプ」「ヨーロッパタイプ」。
これは主に、日本で広まったパイプタバコのカテゴライズと思われるが、パイプタバコの流行の順とも言える。

1600年代イギリスで流行を極めたパイプ喫煙、パイプ煙草も長い間イギリスのタバコが主流だったようだ。
なおヨーロッパでも、昔からパイプ煙草が作られてはいたが、イギリス煙草の模倣から抜け出せないでいたようだ。
しかしアメリカにおいては早くから、独自のブレンドでのパイプ煙草が製造されていた。
アメリカでの独自のブレンド、一説では沢山穫れるバーレー葉を売るため、製造工程での加香を多用する形で行われていたとの事だ。
一方、当時のイギリスタイプは、ヴァージニア葉が主体でありバーレー葉は使用せず、製造工程の加香や味付けも行わず、原料葉の味わいを生かしたブレンドが特徴だったと言われている。(現在は必ずしもそうではない)

戦前においてパイプ煙草の主流はイギリスだったが、第二次世界大戦でアメリカが進駐した事を切っ掛けに、それらの国々にアメリカタイプのパイプ煙草が根をおろして行った。
日本ではマッカーサーが終戦の時、厚木基地にパイプをくわえて降り立った事で、1950年代のパイプブームが訪れる。
この頃のパイプ煙草市場は、重厚な煙草のイギリスタイプと、軽くて人工的な香りのアメリカタイプ、この両横綱が二分していた。
一方、ヨーロッパ大陸では1930年代にアメリカ煙草の製造法が輸入され、オランダを中心にアロマティック煙草の製造が開始された。
たぶんこれが「オランダ・コンチネンタル・ナチュラル」いわゆる「ダッチ」になって行ったと思われる。
なお、アメリカ煙草の製造法はデンマークへも伝わり、デンマークではイギリスタイプとアメリカタイプの中間的な煙草を生産することになる。
これが「ダニッシュ・スカンジナビアン」であり、1970年代にイギリスタイプとアメリカタイプを凌ぐ市場を獲得する。
煙草本来の味わいの重厚なイギリスタイプ、派手な香りのアメリカタイプ、その中間に位置するヨーロッパタイプ(ダニッシュ)。
煙草の味わいを生かしながらも、親しみやすい香りに、ソフトでクールな吸い心地と、イギリスタイプとアメリカタイプの良いとこ取りをしたのがヨーロッパタイプであり、だれもが楽しむ事が出来る無難な煙草と言えそうだ。
パイプをこれから始める人向けの煙草として物の本にでてくるのが、ヨーロッパタイプの代表であるアンフォラ・フルアロマティックや、スウィート・ダブリンであったりするのも頷ける。
ここで一つ、パイプ煙草を始めようとしている人に、注意しなければいけない煙草を紹介しよう。
それがイギリスタイプだ。
煙草本来の味わいを大切にし、ベテラン愛好家にとっては無くてはならない煙草であるが、煙草楽しむ為のハードルは、「喫煙技術・煙草の価格」共に高い。

私もパイプを始めた頃、値段の高いタバコの方がより美味しいのではないかと、今から考えればとんでも無く間違った考えを持っていた。
まあ、そんな考えはラタキアブレンドや、ヴァージニアブレンドのタバコで散々な目に会う事になるのだが。
パイプタバコの初心者だった当時、1980年代の頃である。
パイプタバコの変遷としては、アメリカタイプの勢いが衰え、ヨーロパッタイプの隆盛が始まった頃の事。
ちなみに、当時は日本たばこも専売公社であり、桃山を始め、ビックホーンやプロムナードまでがラインアップとして揃っていた時代である。
話が脱線したので元に戻そう。
パイプ初心者だった私は、パウチ入りで安価な着香タバコを色々と試し、パイプタバコの面白さにはまり、色とりどり香りに惑わされていた。
そんな折り、「パイプ煙草は値段が高いもの程旨い!!」」などと見当違いも甚だしい邪な心で、ダビドフのロイヤルティ・ミクスチャー(ラタキアブレンド)だったと記憶しているが、満を持して購入した。
パウチタバコの3倍はする缶物を、清水の舞台から飛び降りる覚悟で購入し、大切に家に持って帰り、ワクワクしながらパイプに詰めて、目を白黒させながら吸った記憶がある。
すみません、当時の私にはラタキアは早すぎました・・・・・・。

以上が、パイプタバコの詰め方もろくに知らず、甘い着香に目を奪われているような度素人が、大枚をはたいてラタキアブレンドを買った悲劇であるが、今から40年も前の、パイプ喫煙に対する情報が少ない時代では、致し方なしだと思う。
まあ、そんな犠牲者を少なくする為にパイプ物語なんぞを書いているのだが、決して悪くない経験だったとは思う。


紙面が詰まって来たので、二つ目のパイプ煙草のカテゴリーに移るが、海外でよく見かけるのが(昔ネットでそう聞いただけだが)、「ヴァージニアタイプ」「ラタキアタイプ」「アロマティックタイプ」だ。
この分類であれば煙草の味わいが想像しやすく、パイプスモーカーの立場からしても分かり易い、これであればパイプ喫煙の初心者でも怪我をする事はないと思う。
「アロマティックタイプ」であれば味わいが想像しやすく親しみ易い。
「ヴァージニアタイプ」であれば、味わいが素材本来の物であり、高い喫煙技術が求められる、そんな心構えが必要となる。
最後に「ラタキアタイプ」であれば、最初に知らなければならないのが「ラタキアの香りと味わい」であり、これはパイプ煙草独特と言っても良いもので、これは経験してみるほか無いと思う。
こんなところさえ理解しておけば取りあえずは楽しめる。

以上、パイプ煙草のタイプを簡単におさらいした訳だが、近年パイプ煙草事情はさらに大きく変化する事となった。
その昔、日本で幅を利かせていたイギリスタイプ、アメリカタイプ、ヨーロッパタイプのカテゴライズ、当時であれば良かっただろう。
しかし、イギリスの製造メーカーがアメリカ市場向けの煙草を作ったり、アメリカやヨーロッパでヴァージニアやラタキアブレンドの製造をしたり、有名ブランドが製造を移したりと、パイプ煙草事情が急激に変化した現在ではあまり役には立たないと思う。
この辺りの事を踏まえ、次にパイプ煙草の変遷に話題を移そう。


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