14-1 パイプ喫煙の技術について

2002年5月10日号


「パイプ物語」第三部をご紹介する前に、一つ断っておきたい事がある。
それは、パイプ喫煙の技術については、もともとそれほどくわしく触れるつもりは無かったと言う事である。
何故なら、喫煙技等と言うものを書くと、それこそ私がいかにもパイプの達人でございと、吹聴している様でもあり、何もわざわざ「パイプ物語」で取り上げなくとも、パイプ喫煙のノウハウならば、何処にでもそのコンテンツは存在すると、考えていたからである。
しかし、「パイプ物語」が進むにつれて、近頃は喫煙の技術についても、触れざるを得ないと思うようになって来た。
その原因となったのが、パイプ喫煙ならではと言った、特殊な喫煙事情である。
それでは前置きはこの位にして、早速本題に入ろう。

「パイプ物語」の連載を始めて早一年がたつのだが、これを書くにつけて、パイプ喫煙と言うものを、よくよく考えて見た。
そこで、ハタと気付いた事がある。
どうやらパイプ喫煙と言った代物は、葉巻やシガレット等の喫煙の、全く逆方向を向いているのではないかと言う所である。

たとえば現在、日本においてタバコの代名詞となっているシガレット(紙巻タバコ)であるが、非常に楽に喫煙できるタバコである。
その喫煙のしやすさの原因となっているのが、紙に使われている発火剤にあると思うのだが、シガレットは火さえ点ければほっといても燃えてくれる。
さらに、現在シガレットの主流となっているアメリカタイプは、バーレー葉が主体のブレンドタバコである。
そして、このバーレー葉がまた、「助燃剤・増煙剤」と表現する人もいる位、燃え易く、煙量が豊かなタバコなのである。
と考えると、確かにシガレットは、燃え易いタバコに違いない。
それに比べるとパイプ喫煙は、まず肝心のパイプが燃えにくい。
コーンパイプのコーンの軸にしても、ブライヤーのホワイトヒースの根瘤にしても、少々火にくべた位で、燃える様な代物ではない。
更にクレイパイプに至っては、素材が焼き物と来ている、燃える道理がない。
もっとも、燃え易いパイプなど、想像したくもないのであるが、しかしこのパイプのおかげでタバコの火は、ほっておくだけで、いとも簡単に消えてしまう。
又、タバコの葉に目を転じると、そのキザミは、シガレットやシャグに比べて太く大きく、水分含有量も高い、特にキザミの太いイギリスタイプや、フレイク物を、粗ほぐしで詰めた物などは、火付けに苦労する事もしばしばだ。
この様に、燃えない素材に、燃えにくいタバコを詰めて喫煙するのであるから、パイプを始めて右も左もわからない頃であれば、タバコを味わう以前に、満足に吸う事さえおぼつかない。
吸い易さと言う方向性から見た場合、パイプ喫煙は、シガレットの全く逆の方向性を持った喫煙であると考えられる。

吸い易さに関して言えば、葉巻もそうであり、パイプに比べ火付き火持ちは格段に良い。
しかも葉巻は、非常に完成されたタバコであると考えているが、タバコ葉を詰める所から始まるパイプと比べ、完成されたタバコ、未完成のタバコと言う観点において、全く逆の方向性を持っていると考えられる。
もっとも葉巻の話題は次章のネタになるので、これ以上の言及は避けさせていただくが、兎に角、前述の様な具合で、特殊な喫煙事情を持つパイプは、その為に生ずる、喫煙技術を避けて通る事のできないものであると言う事を、認識しておいてほしいのである。

そして、長々と書いて来た喫煙技術の導入部であるが、結論を簡単に言えば、葉巻、シガレット、嗅ぎタバコに噛みタバコ等、様々なスタイルがある喫煙であるが、吸い手側に、より高い喫煙技術を要求するのが、パイプ喫煙なのではないかと言う事である。
下世話な表現をすれば「スモーカーの腕前次第で、パイプ喫煙はより充実したものになる」と言う事になるであろうが、それだけに楽しみがいのある嗜好品だとも言える。
と言う事で、これから喫煙技術について紹介して行くのだが、まず最初は、味は兎も角、取り合えずタバコとして吸える様になると言うのが第一段階。
予定としては、パイプで最も肝心な、タバコの詰め方を中心に書いて行く予定である。
そして次に、第二部で紹介したタバコの味わいを楽しめる様になる、と言うのが第二段階。
ここではパイプ喫煙技術の最大の特徴であり、魅力でもあると思っている技術、しかし経験者でなくては中々理解し辛い技術、「くゆらす」を中心に置き、火のコントロールの仕方あたりに触れて行きたいと思う。
後は、手入れの範疇に入って来る事だが、ジュースの処理、パイプ用のフィルター、ブレークインカーボン、パイプの掃除等に、順次触れて行きたいと思っている。
何処まで書けるのか、少々不安ではあるが、私のつたない経験の中の、失敗談等であれば、大いに参考になると考えている。

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