10-1 肺喫煙を楽しむ

2002年1月4日号


パイプ喫煙は自由である。
これは、シガレット(紙巻き)の喫煙での定番となっている肺喫煙においても、同じだと思う。
紙巻きタバコについては、ある葉巻サイトでの発言に、こんな事が書かれていた。
戦争以前、ドイツのキャバレー等は安葉巻の煙で満ちていたそうである、しかし戦争が始まり、ゆっくりと葉巻をふかしている時間が無くなった為に、手っ取り早く喫煙できる紙巻きタバコが、次第に吸われる様になって行った。
そして紙巻きタバコは、喫煙時間が短く軽いタバコなので、煙を肺に入れる喫煙スタイルが主流になった。
そして戦争が終わってからも、時代の流れが早くなるに従い、葉巻を吸う人は減って行き、紙巻きタバコばかりが吸われる様になって行った。
この喫煙事情は、目まぐるしい現代においても同じである。
だから、私は仕事中は煙を肺に入れる喫煙をしている。
私の仕事場は、現代の嫌煙の風潮に漏れる事無く、お約束通りの禁煙であり、タバコを吸う時は非常階段に追い出されるのである。
勿論、ゆったりと1時間余りパイプなんぞを楽しんでいたら、速攻でクビになる事請け合いである。
喫煙できる時間は精々3分から5分、ゆっくりタバコを味わったり香りを楽しんだりしている暇は無いのであり、手っ取り早く満足する為に煙を肺に入れている。

ここで、パイプ、葉巻喫煙者から「やはりパイプ、葉巻は口腔内喫煙でしょう」との声が聞こえてきそうであるが、肺喫煙も立派な喫煙法だと私は思う。
それに関しては、十六世紀末のロンドンでスライトと呼ばれていた喫煙技術の中で、「ガルブ(煙ごくり飲み込み)」と言う技術があったとの記述がある。

又、私の尊敬して止まないパイプスモーカーの一人である、アルバート・アインシュタインも肺喫煙者だったらしく、以前JTによって発行されていた「ぷかぷか倶楽部」のパンフレットの中に、それと思われる記事が掲載されていた。
アインシュタインは1922年にオランダ・パリ、東洋諸国を巡り、同年11月17日に訪日する事になるが、それに際しトランク一杯に詰め込んだ、パイプ道具一式を持参したと言う程のパイプ好きだったそうだが、しかしてその喫煙の仕方は、まるで煙を肺に流し込む様な吸い方だったと、書かれていた様に記憶している。そして、一度だけテレビでアインシュタインの喫煙風景を見た事があるが、それは紛れも無く肺喫煙であった。
パイプを右手に持ったまま正面にくわえて、ゆっくりと(10秒から15秒)口一杯に煙を頬張りパイプを口から外すのであるが、その時口から顔を覗かせたエクトプラズムの様な濃い煙は、ひょいと口の中に吸い込まれたかと思うと、その後アインシュタインの鼻と口から薄い煙に変わり、勢い良く吐き出されていたのである。
私もこの大先達に習う様なやり方で、肺喫煙をしている。
使用するパイプは小振りなサイズで、入門セット物や安価なセカンドパイプを愛用、そしてタバコであるが、吸い込むのに適しているアメリカタイプ、もしくはヨーロッパタイプのダニッシュを愛用している。
喫味が軽いものであればアメリカタイプ、重い物であればダニッシュタイプ、どちらもバーレーの比率が高く、煙の刺激が十分あるので、少量でもタバコを吸った気持ちにしてくれる。
タバコ葉の詰め方は結構適当で、量は七分目位、詰め方は柔らか目である。
吸い方も、火を万遍無く付け煙を落ち着かせてから、15秒ほど掛けゆっくり、タップリと煙を口一杯に頬張り、おもむろに深く吸い込み吐き出すだけで、煙の吸い方にゆっくりと時間を掛ける事以外、紙巻きタバコとほとんど変わらない吸い方をしている。
この吸い方だと、3回程も吸えば十分満足できるので、吸い終わったら、パイプの中の煙を吹いて出し、タンパで軽く押さえて、次の喫煙に残しておく。
大体、タバコを一回詰めたら、それを2〜3回に別けて吸う様にしている。
味わいとしては、まず煙が喉を通る時の刺激と、煙が肺を満たす時の刺激、そして煙を吸い込んでから、少し間を置いて煙を吐きだすのだが、その時鼻の奥に引っ掛かる、煙の尻尾の部分の香りを楽しみ、更に吐き出す時にも香りを楽しむのである。

これであれば、紙巻きタバコを吸っている人なら、比較的簡単にパイプ喫煙を楽しめるであろうし、紙巻きタバコの様に、短時間で満足する事もできると思う。
しかも喫煙し易い小振りなパイプに、火付きが良く煙量豊かなアメリカタイプ、またはダニッシュタイプのタバコを詰める訳であるから、喫煙技術的にもそれ程難しくはないと考える。
しかし、この現代の喫煙事情に適していると思われる肺喫煙、欠点も幾つかある。
まず第一に、煙を肺に入れるとタバコの味がかなり落ちる事である。
肺のフィルター効果なのだろうが、香りもかなり落ちる上に、第三章で書く予定の、タバコの味わいもほとんど楽しめない、これではパイプタバコの持つ魅力を、全部楽しむと言う訳にはいかないだろう。
しかも、結構強い煙を肺に吸い込むのであるから、長時間の喫煙は体にかなり厳しいし、喫煙技術的にも「吹き戻し」を、ほとんどしないので、パイプ内にジュースが溜まりまくる、更に、喫煙が後半になるに従い、煙は辛くなり、いがらっぽくなる。
これではパイプ喫煙の長所が、ほとんど生かされ無いと思うのであるが、あくまでも現代の喫煙事情に合わた、紙巻きタバコの代用的な喫煙なので、時間の無い時の喫煙はこれで十分だと思っているし、煎じ詰めれば、喫煙のスタイルは人それぞれで良いと思う。
もっともパイプ本来の、ゆっくりとした喫煙を楽しめる余裕のある時は、こんな喫煙はしていないし、肺喫煙だけではパイプの本当の楽しみは分からないと考えている。
しかし、取りあえず取っ掛かりと言う事で、初級者向けと言われているアメリカタイプのタバコが適しているという事と、喫煙技術的に比較的簡単であるという理由で、最初に肺喫煙を取り上げてみた。
ただし、パイプの味わいシリーズであるが、この後「香りを楽しむ」と「味わいを楽しむ」で、更にパイプの味わいの奥深さを紹介して行く予定なので、パイプには色々な味わい方がある事だけは知っていてほしいものである。

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