第 三部 「パイプを上手く吸いたい人へ」

2002年4月12日号

13-1 スモ−キング・イン・仙台

「冷夏暖冬」
去年の夏から今年の春に掛けて、まさにこの言葉が、ピタリと当てはまる気候であるのだが、いささか異常気象の感を拭う事はできない。
真冬であれば昼間でも雪が積もり、夜ともなれば主幹道路さえ凍結する寒冷地の東北。 
しかし、杜の都仙台の春の訪れは、思ったよりも早かった。
そんな陽気に誘われてスモーキング仙台と洒落込んだのであるが、町は図らずも花見のシーズンに入っていた。

今回選んだのは仙台駅正面の青葉通りを車で走る事5分、広瀬川から青葉城址にかけての散策コースである。
青葉通りは、北から定禅寺通り、広瀬通りと並んで3大駅前通りと言え、5月の青葉祭、8月の七夕祭と、仙台では知らぬ人はいない。
しかしそんな大きな通りであるに関わらず、流石はその名にたがわぬ杜の都仙台、仙台駅の西口正面を背に、青葉通りを車で走る事2分、中央分離帯や歩道には、宮城の県木でもあるケヤキ並木が、覆い被さらんばかりにその姿を現す。
そしてさらにチョイと足を伸ばせば大町の交差点である。

時代掛かった作りの「大町交番」に、コンビニの前のやぐらの様な道路標識が現れると、もうそこから先は広瀬川を挟み大橋を越えた辺りを境に、まさに桃源郷と言って良い景観が広がる。
さっき迄のビル街とは別世界と感じられるこの空間であるが、ほんの5分程前に仙台駅前の雑踏にいた事など、忘れさせてくれるだけの魅力がある。
陶然となりながら景色を見ている内に大橋を渡り終え、右手の県スポーツセンター、左手の仙台市博物館を抜けてから右折する。
ここからは青葉城址に向かう山道である。
観光地に向かう道とは言え、大型車であればすれ違うのに苦労する程度の道幅で、それがクネクネと曲がりながら結構続く。さらに道の両側の木々は思ったよりも深く、その背丈は高い、夜中に一人で走れば、立派な肝試しになりそうである。
等と一人ごちしながらしばらく走ると、目の前に見事なヘアピンカーブが飛び込んでくるが、まさにそのカーブの途中に青葉城址の入り口がある、実に分かりやすい。
駐車券を貰い車を門の中に乗り入れる、駐車場は資料展示館等の施設の直ぐ脇にある。
そして車を降りて直ぐ目に入るのがレストランと土産物売り場、そしてその店先に置かれた赤い毛氈敷きの縁台の様な長椅子、しかも灰皿の直ぐそば。
早速腰掛けて店開きである。

カバンから買ったばかりのポウチを取り出し、さながら厚めの文庫本でも開く様に膝の上に置く。
パイプ4本、タバコは50g缶1個にパウチが1袋入る使用になっている、又、小物を入れるスペースもあり実に重宝である。
今回のパイプのシェイプは、何処にでも置ける様にと自立型のポッカータイプ、タバコは花見にちなんだ物、とは言え花様の香りではない。
花見と言えば、日本全国何処へ行っても欠かせないのが「お酒」である。
しかし下戸な私であるので、ここは雰囲気だけと言う事で、マックバレンのミクスチャーをチョイスした、香りがさほど五月蝿くないスコティッシュブレンドである、これなら飲酒運転で捕まる事も無い。
缶コーヒーとパイプで一服した後、パイプを咥えたまま展望台へと向かう。
お土産物売り場と、資料展示館の間を抜けた所、左手の奥に靖国神社がある、ここも春のたたずまいと静かな風情があってよいのであるが、しかし、パイプを咥えたままでの参詣も失礼が過ぎるとい言う物、ここは軽く会釈をして鳥居の手前で失礼する。
そして紫煙を漂わせながら花見胡散に、ブラブラと伊達正宗の騎馬像の下まで行く。
途端に展望が開け、仙台市内が一望のものとなる、絶景である。
その中でも私の目を引いたのが広瀬川で、市内を流れているにも関わらず、両側をしっかり緑に挟まれ、以外に蛇行している印象を受けた。
ただ、こう書いてると万事満足だった様に感じるであろうが、実は現在青葉城址は石垣工事の真っ最中で、あちらこちらにフェンスが立っている、山の麓からは大型クレーンまでも見える始末だ。
ここはサッと流しただけで終わらせ、パイプを咥えたまま車に乗り込み、次の目的地へと急ぐ事にする。
もう一度車で来た道を戻り、広瀬川を渡り「大町交番」を左折する。
そこは今回の第二の目的地「源吾茶屋」や「桜岡大社」のある西公園、その又一角に位置する桜ヶ丘公園である。

車一台がやっとと言った趣の、参道に車を乗り入れ、源吾茶屋を横目に見て仙台市天文台脇の駐車場に入る。
季節は今や桜の真っ盛りで、桜ヶ丘公園の名前が示す通り、一点の翳りも無い程の満開状態である。
うす曇の春の空に、溶け込む様な桜の花の合間に、グルリと半円を描いた出店が、赤や青のマダラ模様を織り成している、小さな頃の縁日を思い起こし、しばし感慨にふける。

花見客の出足も予想以上で、一面に張り巡らされた青いビニールシートの上は、すでに宴もたけなわとなっている。しかし、これだけの人ごみの中である、さすがに私でもパイプを咥えるのは躊躇する。
少々がっかりもしたが、そこは桜の花に免じる事にして、足休めの為に源吾茶屋の暖簾をくぐる。
中は少々薄暗いが、実に時代を感じさせる作りになっている、創業から130年以上と言うのも伊達ではない。
そしてなにより楽しみなのは仙台名物の「ずんだ餅」である。
インターネットで調べると、創業以来同じ製法を守っているとされているが、お味の方は中々である。
ずんだ餅はその餡に特徴があり、枝豆を粗くつぶして、落語などに良く出てくる「半殺し」と言うやつであるが、あっさりとした甘さに仕上げられている。
しかし、枝豆の粒が残る独特の食感と、特有の青臭い香りを持つ「ずんだ」は、かなり好き嫌いが別れるようである。
ただし、私が源吾茶屋に来たなら、一も二も無く「ずんだ餅」を選ぶであろう。
取り合えずパイプ喫煙の出来ない所での長居は無用である、しばしの足休めの後、桜に心を残しながら、最後の目的地「タバコセンター カワラダ」に向かう。

仙山線で二駅の距離を走る事10分、なじみの場所に車を止めて早速店内に入る。
そしてご主人との話ももどかしく、パイプにタバコを詰め始める。ただし、パイプタバコは青葉城址で吸った「マックバレン ミクスチャー」ではない。
今年の3月1日にオープンしたばかりの新店舗は、タバコ屋と言う事を抜きに考えても、かなりのグレードの店構えだ、さらに2階にはスモーカー歓迎のショットバーが準備の最中である、私にもパイプスモーカーとしての見栄があると言うものだ。
そこで、デイリィー用のパウチ物からランクを上げ、「マックバレン ハイランド ミクスチャー」を奮発したのである。
味わいの系統としては、スコティッシュ ブレンドであるので同じなのだが、タバコの質も使われている洋酒もランクの違いを感じさせてくれる、なにより外装に使われている缶が高級そうで見劣りはしない。
そしておもむろに火を入れて、煙を美味そうに吐き出してみる、やはりパイプスモーカーは、こうでなきゃいけない。やっと一心地付いた所で、ご主人とタバコ談義を始める、いつもの事とは言え中々話は尽きる事が無い。話の中心がパイプからタバコに移り、そして喫煙具やその他の世間話に飛び火しながら、大抵の場合葉巻の話へと落ち着く。
かたや肝心のパイプはと言うと、火が消えたり、そして点けたり、タンパーで押さえたりが、何度となく繰り返される、やはり口数が増えた分だけ、パイプタバコの火は消える様である。
そんなこんなで、結局花見をしに来たのか、タバコを吸いに来たのか分からない様になり始めた辺りで、外も暗くなって来た。
そして、ろくすっぽ買い物もしないまま店を後にしたのだが、結構満足できた一日であった様に思う。
それは、こんな些細なスモーキング仙台のドライブではあったのだが、パイプタバコをユックリと堪能する事ができたからであったのだろう。
どうやらパイプスモーカーと言うものは、紫煙を共に過ごしていると言った事だけで、万事ご機嫌なものであるらしい。

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